【スタートアップ向け知財情報】1発特許査定!でもそれは喜ぶべきではない場合も…

知財情報

はじめに

特許出願をして、特許庁の審査を1発でクリアできたら、とても喜ばしいと思われる方も多いかもしれません。

拒絶理由通知への対応も不要で、最低限のコストと工数で早期に権利化ができた訳ですから。

しかしながら、(あくまで私個人の意見ですが)喜ばしくない場合も実はあります。

特許権を取得できることはもちろん喜ばしいことなのですが、「1発クリア(特許査定)」に対しては、場合によっては喜ばない方が良いかもしれない、という意味です。

この点について以下、解説していきたいと思います。

なぜ「1発クリア」は喜ばしくないか?

結論から言うと、1発クリアの場合、権利範囲を必要以上に狭くしてしまっている可能性が比較的高いからです。

権利範囲が狭いと言うのは、大抵の場合、特許請求の範囲(請求項)に記載された構成要件が多いと言い換えることもできます。

そして、「構成要件が多い」というのは、他社からすれば、その特許権を侵害するための条件が多い=侵害を回避しやすい、ということになります(条件が多くなるほど、一般的に全ての条件を満たすのが難しくなるのと同様です)。

また、「必要以上に」というのは、もっと広い権利範囲にできたかもしれない、という意味です。

特許庁から来る拒絶理由通知とその対応(補正書・意見書)というのは、与えられた材料(審査で引用された先行技術)の範囲内ではありますが、権利範囲を広げられる限界を見極めるプロセスとも言えます。

もちろん、特許出願前に先行技術をしっかり調査して、「これ以上近い先行技術は無いはず」と自信を持って言えるレベルまで調査できていれば話は別ですが、そこまで言い切るのはなかなか難しいかと思います。

1発特許査定が出たらどうしたらいいの?

自分が他社の立場だったらという視点で、特許請求の範囲を厳しい目で再度見直してください。

発明に必須でない構成要件が含まれていないか、容易に侵害が回避できそうな構成要件がないか、等等。

では、もし「この構成要件は削りたい、または変更したい(例えば、上位概念化したい)」と思ったときは、どうすれば良いでしょうか。

特許法上、特許査定が出た後に特許請求の範囲を補正することはできません(特許法第17条の2)。

この場合は、以前にも記事(下記リンク)にしましたが、分割出願を活用してください。

特許請求の範囲から、必須でなかった構成要件を削除したり、構成要件を変更して、分割出願をすることで、より広い権利範囲の特許権を取得できる可能性があります。

ここで注意しておくべき点は、構成要件を削除・変更(上位概念化)すると、特許請求の範囲が広がる分、特許庁の審査で先行技術が引用されて、拒絶理由通知が来る可能性が高くなるということです。

とはいえ、拒絶理由通知が来たからと言って落ち込む必要はありません。

上述したように、引用された先行技術と比較しながら権利範囲を広げられる限界を見極めるチャンスと捉えて、弁理士さんと相談しながら、拒絶理由が克服できるギリギリの広さで権利化にトライしてください。