【スタートアップ向け知財情報】特許ライセンス契約、基本の基本③

知財情報

はじめに

特許ライセンス契約の基本的な内容を解説するシリーズ3回目。

初回と第2回の記事は下記リンクからご覧ください。

今回のテーマ

  • Who:誰が自分の特許権(以下、単に特許)をライセンス(実施許諾)するのか?
  • Whom:誰に対してライセンスするのか?
  • What:どの特許をどの製品に対してライセンスするのか?
  • Where:どの地域でライセンスするのか?
  • When:ライセンスの期間(契約期間)は?
  • How:ライセンスの種類は(どのような許諾内容)?
  • How much:ライセンスの対価は?

今回は、HowとHow muchについて解説します。

How

まず、どのようなライセンス(許諾内容)にするかについてです。

ライセンスは、独占的ライセンスと非独占的ライセンスとに大別されます。

文字通り、独占的ライセンスはある特定の者にその特許発明の実施を独占的に認め、非独占的ライセンスは特定の者に限定せず、単純にその特許発明の実施を認めるだけです(つまり理論上は、100人でも1,000でも非独占的ライセンスを与えることが可能です)。

独占的なものには、更に、特許法で定められた専用実施権(特許法第77条)と、特許法ではなく契約によって定められる独占的通常実施権とに分けられますが、専門的な話になるのでここでは割愛します。

独占的ライセンスか非独占的ライセンスか

実務では、独占的ライセンスよりも非独占的ライセンスの方が多く採用されています。

というのも、独占的ライセンスはあまりにも自由度が低いからです。

特許権者(ライセンサー)の立場で言えば、契約期間(例えば、5年間)は、その特定の者以外にはライセンスできないですし、専用実施権の場合は特許権者でさえ、その設定範囲内での実施が制限されます。

また、ライセンスを受ける側(ライセンシー)の立場で言えば、独占的ライセンスの場合は対価の面でかなりきつい条件になっていることが想定されますので、ビジネスが傾いたとしても契約期間中、その条件に縛られてしまいます。

以前にも書きましたが、将来のことは分からない以上、やはりある程度の自由度は必要です。

更に言うと、専用実施権の場合は、特許庁への設定登録が必要ですので、他人に契約関係がバレてしまいます。

従って、特別な事情がない限り、非独占的ライセンスを選択した方が良いと私は思います。

その他

ライセンスの譲渡やサブライセンス権(ライセンシーが、更に別の第三者に対してライセンスを付与できる権利)の可否も検討すべきですが、特許権者(ライセンサー)の立場で言えば、基本的にはどちらもNGが無難かと思います。

どちらの場合も、特許権者(ライセンサー)の予期し得ない第三者(絶対にライセンスしたくないライバル会社とか)にライセンスが及ぶ可能性があるためです。

また、許諾内容に関連して、ライセンシーの立場としては、契約期間の実施分もケアしておくべきです(過去分の免責などと呼ばれ、大雑把にいうと過去の実施分に対しても事後的にライセンス済にしてもらうこと)。

How much

最大の争点になり得る、対価についてです。

対価で検討すべきは、その金額はもちろん、支払方法も非常に重要です。

まず金額については、基本的に一回では決まりません特にライセンシーの立場であれば、一回で決めない方が無難

ですので、特許権者(ライセンサー)の立場であれば、欲しい金額の最低ラインを事前に決めておいて、その最低ラインより大きい金額から提示すべきです。

反対にライセンシーの立場であれば、特許権者側から最初に金額提示させ、そこから下げる努力をしましょう。

上記の通り、特許権者側も言い値では応じないと思っていることが多いと思いますので、余程の事情がない限りは、特許権者側の言い値には応じない方が良いでしょう。

また、以下で解説する支払方法によっても、金額は影響されます。

支払方法については、①固定金と②ランニングロイヤリティの大きく2種類があり、これらを組み合わせるケースも多いと思います。

固定金

固定金は、文字通り、契約で決められた金額をライセンサーに支払うのですが、更に一括払いと分割払いとに分けられます。

ライセンシーとしては、資金に余裕があるのであれば、「全額を一括で支払うから減額して欲しい」という減額交渉が一つ考えられます。

ライセンサーとしても、ライセンシーが倒産してしまった場合、対価を全て回収できなくなるリスクもあるので、多少減額してでも一括金を選択するのも一つの案だと思います(分割払いでも、初回に大半を支払ってもらう案もあります)。

特に上記した過去分の免責がある場合は、通常、過去分の実施料として固定金が支払われます。

ランニングロイヤリティ

ランニングロイヤリティは、ライセンシーが自身の売上の一定割合を支払う方式で、

  • 許諾製品の売上総額 × 実施料率
  • 許諾製品の販売個数 × 許諾製品1個あたりの実施料 

といった計算方法があります。

実施料(率)を契約期間中に一定にすることもあれば、契約期間中で変化させることもあります(後半に値上げ/値下げする等)。

固定金とランニングロイヤリティのメリット・デメリット

特許権者目線で、それぞれのメリット・デメリットを表にまとめます。

メリットデメリット
固定金ライセンシーの売上が、契約時点の想定よりも大幅に下がっても、決まった金額の対価を得られる
(一括金なら回収もより確実)
ライセンシーの売上が、契約時点の想定よりも大幅に上がっても、対価は変わらない
ランニングロイヤリティライセンシーの売上が上がれば、対価もそれに応じて上がるライセンシーの売上が下がってしまうと、対価もそれに応じて下がる

見てお分かりの通り、それぞれメリット・デメリットがほぼ反対なだけです。

言い換えると、固定金とランニングロイヤリティとを組み合わせることは、リスク分散になるので、是非検討してみてください。

次回は、特許ライセンス契約の主要条項ではありませんが、知っておくと役に立ちそうな内容をテーマにしたいと思います。