【スタートアップ向け知財情報】特許ライセンス契約、基本の基本①

知財情報

はじめに

他社の特許を自社で使いたい場合、他社から自社の特許を使わせて欲しいと申し入れがあった場合、特許権者からの警告を受けてライセンスを導入すると決めた場合等に特許ライセンス契約を締結します。

本記事では、特許ライセンス契約の基本的な内容について、複数回に分けて解説していきます。

スタートアップの方だけでなく、出願権利化がメイン業務で、ライセンス契約について経験があまり無い知財担当者の方にも有益な情報かと思います。

基本的な内容とは?

特許ライセンス契約と聞いて、難しそうと思われる方もいると思います。

専門的な内容の契約になるためもちろん難しいですが、基本的な内容だけでも押さえておくと、弁護士さんに契約書の作成を依頼するときにも話がスムーズになると思います。

なお、特許ライセンス契約等の契約関係については、契約条件によっては独禁法公取委のガイドライン)もケアする必要があるので、やはり知財をメイン(の一つ)にされている弁護士さん(法律特許事務所)に依頼するのがベターかと思います。

さて、特許ライセンス契約の「基本的な内容」っていったい何?と思われているかもしれませんが、ビジネスシーンでよく用いられる「5W2H」等のフレームワークに当てはめて、以下のように考えれば良いと思います。

  • Who:誰が自分の特許権(以下、単に特許)をライセンス(実施許諾)するのか?
  • Whom:誰に対してライセンスするのか?
  • What:どの特許をどの製品に対してライセンスするのか?
  • Where:どの地域でライセンスするのか?
  • When:ライセンスの期間(契約期間)は?
  • How:ライセンスの種類は(どのような許諾内容)?
  • How much:ライセンスの対価は?

上記の内容を表に落とし込んだものをタームシートや契約骨子と呼びます。

今回は、Who、Whom、What(特許)について解説します。

念のため付言しておきますが、これから説明する内容が唯一の正解という訳では当然ありませんし、あくまでも私の個人的な考えです(そもそも相手のあることですので、こちらの理想通りにいくことでもありません)。

それでは早速一つずつ見ていきましょう。

Who/Whom

契約の当事者として、誰が誰に対してライセンスするのか、という、これがなければ話にならない、という内容です。

子会社やグループ会社もあるような大きい会社になってくると、どの範囲まで含めるかという点は検討が必要です。

クロスライセンス(相互実施許諾)であれば、両者が互いにライセンスしあうことになります。

What(特許)

次にWhat、つまりどの特許をどの製品にライセンスするか、つまりライセンス契約の対象特許と対象製品を検討します。

特許については許諾特許・契約特許・Licensed Patents等と呼び、製品については許諾製品・契約製品・Licensed Products等と呼びます(ここでは、許諾特許と許諾製品とします)。

まず、許諾特許の範囲については、具体的に特許を特定(リスト等に列挙)するのか、それとも自分(相手)の手持ちの特許の実質全てなのか検討します(細かく言えば他にもバリエーションはありますが、かなり実務的な内容になってしまうので本記事では割愛)。

特許を特定する場合は、当然のことながら、特定した特許以外の特許についてはライセンスの対象外になります。

特許ライセンス契約(特にクロスライセンス)は、基本的にはその当事者間での和平協定的な位置付けで締結されることが多いと思いますので、その場合は手持ちの特許の実質全て、とすることが多いかと思います。

ここで、「実質全て」といったのは、将来発生する特許をどうするのか?ということが絡んでくるからです。

特許ライセンス契約の条件(特にHow much:対価)は、基本的には、契約時点での両者の特許力や売上規模等のバランスを考慮して決めますので、不確定な将来分のことは考慮に入れられない要素です。

将来のことは誰にも分からない以上、当事者が将来(厳密には契約期間中に)出願し、取得する特許についてもライセンスするかどうかは、慎重に検討しなければなりません(※もしかしたら契約締結後に、自社特許の量や質が一気に上がるかもしれません)。

そういう意味では、許諾特許は、契約締結日や契約発効日以前に出願された特許(=現存する特許)に絞るのが無難かと思います(契約発効日についてはWhenのセクションで補足します)。

また、契約期間中に他者(会社・大学・個人等)から購入した特許も許諾特許に含めるかどうか検討が必要です。

上記の内容を踏まえて、許諾特許の範囲を検討していただければと思います。

続きは、次回の記事で解説していきます。