【スタートアップ向け知財情報】その発明、本当に出願して大丈夫?

知財情報

はじめに

何か有用な発明を思いついたら、それを特許出願(特許権を取得)して、他人には使わせたくない、とまず考えるかと思います。

ただ、何でもかんでも出願するべきではなく、ときには出願せずにノウハウとして秘密にしておくべき場合もあります。

最悪の場合、他社の模倣を止められず、特許権を取った意味が無くなってしまう場合があるので要注意です。

特許権を取ったのに、他社の模倣を止められない?!

他社の模倣を止めるための手段・権利が特許権なのに、そんなことがあるのか?と思われるかも知れません。

確かに、他社製品が自分の特許権を侵害していれば、法律上、その侵害行為は止められます(差止請求権;特許法第100条)。

しかし、他社の侵害行為を止めるためには、他社製品が自分の特許権を侵害していることを裁判所に対して証明する必要があり、その立証責任は特許権者側にあります(もちろん、裁判所に特許権侵害と認めてもらう必要があります)。

したがって、模倣品と疑われる他社製品を見つけても、その製品が自分の特許権を侵害していることを立証できなければ特許権でその模倣を止めることはできないのです。

具体例

では、どういった場合に侵害を立証することが困難になるでしょうか。

前提として、特許権の権利範囲は、文章(特許請求の範囲・請求項)で定義され、その文章中に発明を構成する要素(構成要件)が列挙されています。

したがって、模倣品と疑われる他社製品が全ての構成要件を満たしていることを立証する必要があります。

構成要件が、例えば、形状や材質であれば、その模倣品を調べればある程度は分かるはずです。

他方、構成要件が、例えば、完成品には痕跡が残らないような製造方法に関する場合や、解析しても特定できないようなアルゴリズムの場合等は、製品を調べたところでその構成要件を満たしているかは分かりませんし、侵害していることも立証できません。

まとめ

特許権は、差止請求権という強力な排他権が付与される代わりに、その発明内容を全世界に公開しなければ付与されません(出願公開;特許法第64条)。

つまり、具体例に示したような侵害を立証できない特許権を取得しても、その強力な権利を行使できないのに、その発明内容は全世界に公開されてしまいます。

その結果、侵害しても見つけられないのであれば模倣してしまえ、という人も出てくるかも知れません。

何か有用な発明が生まれて特許出願しようと検討される際には、その発明が他社に模倣されても、きちんと見つけられて、更に立証もできるのかについても、是非ご検討いただければと思います。

もし見つけられない、立証できないというのであれば、ノウハウとして社内で秘匿されるのが良いと思います(その場合は、不正競争防止法の観点から、秘密情報としてしっかり管理してください)。