【スタートアップ向け知財情報】その共同出願契約、「店じまい」まで考えた?

知財情報

はじめに

今回は契約、特に共同出願契約の話をしたいと思います。

注意すべきことは色々あるとは思いますが、その中でも意外と蔑ろにされがちな点を一つ紹介したいと思います。

「店開き」したら「店じまい」まで考えておく

共同出願契約をするということは、新しい発明について誰かと一緒に新規に出願(=店開き)するときです。

何かを始めようとしているときなので、どうしても特許を放棄(=店じまい)するところまで十分に検討されていない場合もあると思います

実際、ネットで「共同出願契約」で検索すると雛形がいくつか見つかりますが、放棄に言及しているものは少ないです。

しかし、放棄のことまで契約でしっかり手当てしておかないと、後々、面倒なことにもなりかねません

契約に規定のない事項等は協議する、ということでも解決はできるでしょうが、揉めてしまうとすぐには解決できないですし、そのような終息間近の案件で時間をかけるのは勿体ないです。

具体例

他社と共同出願をするにあたって、共同出願契約を締結したはいいものの、その共同出願に係る特許権(以下、共有特許A)を放棄したいときにどうするかが十分に規定されていないケースがあります。

共同出願契約自体は、共有特許Aの満了・消滅時に終了することが一般的で、それ自体はどの契約にも書かれていると思います。

しかし、共有権者の一方(以下、X)が共有特許Aの自己の持分を放棄したいと思ったときのことまで規定していないケースもあります。

共有権者の他方(以下、Y)も放棄したいと思ってくれたら、共有特許Aごと放棄するだけなので話は早いですが、Yが維持したいと思った場合はどうでしょうか。

共有特許AをY単独名義に変更する際の手続をどちらがするか(特にどちらが費用負担するか)については協議して決めないといけません(そこまで大きな金額ではないですが)。

また、Yが権利を維持するというのであれば、Xとしては、持分を放棄するとはいえ、将来何があっても自己実施は確保できるように共有特許Aについて無償の通常実施権(ライセンスバック)を要求すべきと思います。

その場合、Yがすんなり応じれば良いですが、そうはならない場合もありますし、ライセンスバックの契約書の準備も必要になり、時間も労力もかかります

対策案

以上から、「店じまい」についてもきちんと契約時点で規定しておいた方が、後々揉め事も少なくなるということがお分かりいただけたかと思います。

では、契約時点でどう規定しておけば良いでしょうか。

前述した共同出願契約の雛形には、相手方の書面による同意があれば放棄可能、というものもありますが、この場合、相手方から拒否されたら結局、放棄できず特許維持年金を支払い続けなければなりません

ですので、例えば、一方が放棄を希望し、他方が特許維持を希望する場合、名義変更の手続きや費用負担は、特許を維持する側が対応する(+放棄した側に無償の通常実施権を許諾する)としておくことが考えられます。

契約時点では、どちらが放棄したいと言い出すかも分かりませんので、ある意味、平等・対等な関係であるため、このような条件でも纏まりやすいと思われます。

特許の維持年金も高年次になると馬鹿になりませんので、やはり放棄したいと思ったら、自由に放棄できるようにしておくのが良いように思います。

もちろん、上記がベストかどうかは各案件の個別の背景や状況等を鑑みて検討すべきではあります。

特に自分の方が維持し続ける側になる可能性が高そうな場合は、放棄した側への無償の通常実施権の許諾までは規定しておかなくても良いかも知れません。

大企業に限らず、スタートアップでも他社や大学等との共同開発から、共同出願に至ることも多いと思いますので、契約の際は放棄のことまで検討して頂ければと思います。