【スタートアップ向け知財情報】「引当金」って知ってる?

知財情報

はじめに

これまでは特許出願をする場合等、つまり「自社特許」目線の注意点を記事にしてきました。

今回は目線を変えて、「他社特許」目線で自分の事業を見た時の注意点を記事にしたいと思います。

大企業と比較すると規模の小さいスタートアップといえども、事業をやっていると他社特許のリスクは無視できません。

具体例

いきなり具体例ですが、競合他社やパテントトロールから自社製品に対して特許権侵害を主張された(要は特許で攻撃された)としましょう。

攻撃された側としては、非侵害・他社特許の無効・自社特許でのカウンター(パテントトロールを除く)等、あらゆる手段で反撃し、可能な限り被害を小さくするべきです。

しかし、その時々の経営状況も踏まえて、裁判に入って弁護士費用等の負担が増える前に早期解決を目指して、和解金(ライセンス料)の支払いを選ぶこともあるでしょう。

あるいは、裁判で争ったものの、奮闘虚しく特許権侵害の判決が確定し、損害賠償金の支払いが命じられることもあるでしょう。

そして、支払額が例えば数千万円とか数億円になってしまった場合はどうでしょう?(米国の裁判では損害賠償額が非常に高額になるケースがあります)

そんな大金、すぐに準備できるでしょうか?

そこまでの金額でなくても、計画外の支出となると資金繰りも狂ってしまいます

引当金

こういうときに備えて、「引当金(ひきあてきん)」というものを準備しておきます。

私は税務会計の専門家ではありませんので、詳細については経理担当者や監査法人等の専門家に確認して頂きたいのですが、以下ざっくり解説します。

引当金とは、将来発生する特定の費用や損失に備えるため、予め準備しておく金額のことです。

余談ですが、引当金の中でもメジャーなのは、回収できない可能性の高い売掛金等に対して計上する貸倒引当金や、会社の賞与(ボーナス)用に計上される賞与引当金かと思います。

さて、引当金を計上する場合、下記の要件を満たす必要があります。

  1. 将来の特定の費用または損失
  2. 発生が当期以前の事象に起因
  3. 発生の可能性が高い
  4. 金額を合理的に見積もれるもの

特に要件❹の「見積額」に主観が入る可能性がある以上、利益操作を疑われかねないので要注意です。

「実際の支払額<引当金」だった場合、余った分は利益に回るため、引当金が多額になると、意図的に利益を来期に繰り越しているような印象を持たれやすいかと思います。

例えば、今期:黒字予想・来期:赤字予想の場合に利益が来期に繰り越されると、今期の納税額が小さくでき、来期も黒字にできます。

したがって、利益操作を疑われないように、見積額は慎重に設定しなければなりません。

知財紛争における要件❹は、権利者側(攻撃側)から提示された条件(ex. 年間○○円の支払いを5年間)や、特許権侵害訴訟で請求された損害賠償額といった客観的で具体的な数字があれば十分に満たされると思います。

詳細は専門家に確認して頂きたいですが、以上の知識を頭の片隅に置いておくと、いざというときに役立つかと思います。